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チェルノブイリからみた福島第一原発震災

講師:河田昌東(マサハル)さん(「チェルノブイリ救援・中部」理事、遺伝子組み換え研究専門家)

主催:日本有機農業研究会

6月5日國學院大学常盤松ホールにて

エネルギー大量消費による炭酸ガス(Co2)排出がもたらす地球温暖化が危機感をもたれる中、チェルノブイリ原発事故以来世界的に停滞気味だった原子力発電が息を吹き返し、この数年新たなビジネスチャンスとして活発化してきた。そして3月11日の福島原発震災は、日本ばかりでなく世界の人々に原発が危険な存在であることを知らしめた。

4月26日、チェルノブイリ原発事故から25年目を迎えた。低出力運転中に突然暴走爆発したチェルノブイリ原発と、地震と津波による冷却装置破壊の福島原発事故は原因は違えども生じた放射能汚染の結果は似ている。

放射性セシウム134(半減期2年)、セシウム137(半減期30年)らは長く土壌にとどまり、そこで栽培される農作物や牧草を汚染し、あるいはそこで暮らす人々の呼吸を通じて放射性粒子(ホットパーティクル)は体内に取り込まれる。こうした汚染がもたらすものは人体の「内部被曝」。細胞が放射性元素の直近で被曝し遺伝子が破壊される。ウクライナ国民の総被曝線量は、外部被曝が20-30%、残りの70-80%は内部被曝である。マスコミに登場する専門家、広島・長崎の医師らの甘い年間被曝線量基準は、広島・長崎の被曝者調査による「外部被曝」をもとに算出されている。チェルノブイリの内部被曝ではガンや白血病は病気の一部。ウクライナ、ベラルーシでは、事故後最もおおくなったのは、心臓病や脳血管病、糖尿病などの内分泌病、免疫力低下による感染症である。最近の研究で、放射性セシウムは心臓に最も早く蓄積し、そのエネルギー源となる細胞内のミトコンドリアと呼ばれる細胞内小器官の働きを破壊することがわかっている。

私たちは否応なしに放射能とともに生きざるを得ない世界に突入したのである。
(配布プリントから抜粋)

第一部 「福島原発震災とチェルノブイリ」


4月末南相馬市北部、飯館村の写真。福島第一から北西40キロ。放射線量23.63msvを示す。1年間過ごせば作業員労働被曝線量を越す。そこにいまだ1000人以上の住民が残っている。
25年前、1986年4月26日深夜チェルノブイリ事故。そのニュースが発表されたのは4月30日。スウェーデンの研究者が気付く。どこの国でも隠したがる。日本では「このような事故は起こりません」と電気事業連合会のパンフレットに印刷されている。

チェルノブイリでは急ごしらえの石棺が覆われ、沈下し屋根には穴が開き、さらに大きな石棺で覆う計画だが、いまだ実行されず。事故後1ヶ月間で31名作業員死亡、閉じ込められたままの人もいる。

福島とチェルノブイリ事故の違い
・チェルノブイリ…制御失敗で核暴走、爆発

・福島…2つの冷却失敗。炉心、使用済み燃料貯蔵プール

福島県内の土壌汚染は爆発時の降下により。今も蒸気が出ている。

5/12毎日新聞 地震から16時間後に1、2、3号機が水素爆発前に炉心の大半が溶融。海を汚すか水素爆発を起こすか。

被曝と環境への影響

・ベクレル(Bq)…放射性物質、物質量。昔はキューリー

・レントゲン(R)…放射線強度

・グレイ(Gy)…エネルギーを生物は吸収 吸収エネルギー

・シーベルト(Sv)…影響を生物は受ける 生物影響 物質的に測定できない 遺伝子のヤケドの大きさ

※放射能は通称語


はじまった地球汚染(福島第一原発震災により)

アメリカでも牧草が汚染、牛乳からヨウ素が検出される

ハワイで天然ウラン238が検出される

ホットスポットの存在 3/17政府はわかっていたはず

飯館村では線量上がったり下がったりせず、地面に定着

 

チェルノブイリの教訓

原発事故 内部被曝(放射性物質を体内に取り込む。空気、食べ物、飲み物が原因。被曝の密度が高い)が問題

広島・長崎は外部被曝が中心 ガン、白血病に限ったデータ

長崎大学の教授「広島・長崎は福島に負けた」発言、被爆者に対する冒涜

内部被曝を認めると膨大な認定者が生じる

 

放射線照射で何が起こるか

傷ついた遺伝子が増幅され、分裂盛んな細胞ほど影響が大きい

1.遺伝子の瀬悦段と損傷 細胞死・突然変異→個体死・ガン

2.細胞内分子の切断→フリーラジカルの発生 放射線の古典的テーマ
 自分自身を安定化させるため周りのタンパク質を壊す

 

風下で起こること

・放射線による被曝

・農作物、飲料水の汚染

・海、土の汚染

 

2002年上半期ウクライナ ナロジチ地区の食べ物の放射線測定結果

セシウム137土壌汚染→野菜への蓄積

トマト、カボチャ少ない

キャベツ、クレソン、大根高い

食べ物による内部被曝高い

事故後15年ナロジチ地区住民の体内放射能7400-18500Bqがいちばん多い(cf.日本人平均20Bq)

事故後ウクライナ、ベラルーシで起こった様々な病気は心臓病、脳血管病、糖尿病、先天性異常、ガン・免疫低下など。ICRP認めず。放射能影響はガンだけであると。

 

ナロジチ地区(ウクライナ)成人の総罹患率…10万人あたり6万人病気をもっている

子ども0-17才…1人で2つちかい病気

ウクライナの甲状腺ガン 0-14歳の発病率高い。また女性の発病率が高い。

 

農産物汚染始まる(3/21)

野菜 茨城のホウレンソウ 54100Bq/kg 基準27倍

原乳 5300Bq/kg 基準17倍

 

広がる食品汚染

5/24 茶葉汚染…汚染しやすい

葉から吸収 葉面九州高い

梅…カリウム濃度が高いため

淡水魚汚染5/29 ワカサギとヤマメ 820-990Bq/kg

3/20採取雑草 飯館 265万Bq チェルノブイリでも聞いたことのない数値

ヨモギ汚染されやすい

 

飲料水の汚染始まる 3/17

 

放射性セシウムの基準(単位Bq/kg)

  ウクライナ 日本暫定
飲料水 2 200
パン 20 500
ジャガイモ 60 500
野菜 40 500
果物 70 500
150 500
ミルク乳製品 100 200
6/個 500/kg
粉ミルク 500 200
キノコ 500 500

 

椎茸の放射能汚染 汚染されやすい 菌糸広げセシウム吸い込む

 

汚染水の大量放出始まる 4/4

魚介類汚染増加は必至

 

土壌汚染、海の汚染

コウナゴ、シラス、ワカサギ、鮎

食物連鎖で濃縮

沿岸部の海岸の底

 

下水処理場の汚泥汚染

放射性物質吸着 終着駅 汚染環境の中で暮らしている とりあえずそこに置いておきなさい(政府方針)

出荷停止になった野菜どうなっている?

廃炉になった時、廃炉時代の先取りを体験させられている

基準以下のものは再利用

 

事故処理作業員の被曝は続く

チェルノブイリ1ヶ月以内31人死亡 被曝障害者

これまで5万人以上死亡

石棺建設まで85万人投入

1人の作業時間は2-3分(鉛のカバーをつけて)

福島はまだできていない

 

事故前50msv/年間

事故後通常100msv/年間

暫定250msv/年間

厚労省課長の名前で書類に押印される

650msv超えた作業員も。

 

これから自然界で起こること

3/15 いわき市内奇形の菜の花

チェルノブイリでの奇形の植物

マツ、カメムシの奇形

 

STOP浜岡

浜岡原発停止へ 5/7

津波対策すれば稼動してよい 15mの衝立を建設する

津波より直下型地震の危険がある

 

プルトニウム

水に溶けない 農作物に影響ない

しかし肺に入ると×

第二部 「放射能汚染かでどう生きるか」

 

今、必要なこと

1.放射能放出の停止

2.徹底した汚染調査

3.汚染対策

4.被曝対策

 

避難した先で被曝

南相馬市500m2メッシュで細かく調査予定

50才代以上の調査隊を結成(応募者多数だった)

 

汚染の現状

ナロジチにて菜の花プロジェクト

土壌汚染の違い

  25年後のチェルノブイリ 今の福島  
20cm Cs137+Cs134   Cs137+Cs134 3cm
40cm Sr92      

 

土壌汚染

農水省

Cs137+Cs134:5000Bq/kg以下なら稲作OK 1割が米に移ると考えて。(実際はそれほど移らないだろう。)

畑作は基準なし 結果主義(出荷検査結果次第) 

→「予防原則」の導入が必要

出荷制限した野菜の処分方法なし

 

土壌の除染が必要

校庭

公園・歩道・遊具…洗剤で拭けば取れる

農地

 

国が年間20msv基準を設定4/19

私たちの提案 剥土埋没処理 表土5cm剥離し、トレンチに埋める。将来は国・東電が撤去

校庭によって減少効果違う

5/28校庭土処理 国が負担することに

 

農地の汚染対策

・表土剥離

・バイオレメデーション 時間かかるがセシウムを抜いていく

福島市内の果樹園で表土剥離試験10a 5/22

汚染しているのは雑草

作業者の外部被曝、内部被曝の軽減、果実の汚染軽減

 

暮らしの中の被曝対策

外部被曝…ライフスタイルで異なる被曝

生活被ばく線量測定の提案 累積線量を1週間単位で計る

対策例…生活空間の被曝線量を下げる

・通学路や歩道の除染:高圧放水による除染→最終的には下水処理場に流れる

・公園・遊具の除染:洗剤で拭く

 

汚染した土地での農業(表土剥離が困難な場合)

ナス科(トマト、ナス)、ウリ科(キュウリ)、カボチャなど汚染しにくい作物を作る

セシウムはカリウムと同属 カリウムたくさん撒けばより大丈夫

食べないものを栽培

汚染しやすい作物…アブラナ科(ナタネ、カラシ菜、キャベツ、ダイコン等)>ホウレンソウ>ジャガイモ>豆類

※ジャガイモはナス科だが果実でなく茎のため汚染される

 

吸収抑制

肥料成分による抑制

K肥料…Cs137と

Ca肥料…Sr90と

腐葉土…Cs137を吸着する有機物

注 N肥料は吸収を促進

吸着剤の散布 ゼオライト、ベントナイト、バーミキュライト等(Cs137と吸着)

注 活性炭と同時に散布すると吸収促進

 

散水による放射能汚染

給水、農薬散布用の水などによる放射性セシウムの経根吸収<葉面吸収

井戸水は安全

山間部の水は注意

 

畜産物の汚染

多くは数〜数10Bq/kg(暫定基準は50Bqなので市場に流れている)

 

畜産農家の対策

放射性セシウムの吸着剤プルシヤン・ブルー(PB)を餌に混ぜる(1-2%)。セシウムとくっつく。水に溶けない。

PBはセシウムと家宅結合し、体外に排出される。

チェルノブイリ事故の後、ノルウェーで開発され、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアで使用されている

IAEA報告書1997

 

飲料水の除染

深い井戸は安全

ペットボトルの水

水道水を処理する

・ヨウ素…活性炭

・Cs137、134…ゼオライト、ベントナイト

・逆浸透膜浄水器(水以外のものは総て取れる)

 

食物による内部被曝対策

・産地を選ぶ(権利がある) 500Bq以下のものは流通している(汚染地域の農家の人はどうしたらよいのか…答えがない)

・よく洗う、煮る

・汚染しにくい野菜を選ぶ(トマト、キュウリ)

・酢漬けにすると放射性セシウムは6-7割取れる

 

放射線の影響をできるだけ減らす

フリーラジカル(例:活性酸素、活性水素)

・放射性セシウムを吸着する ペクチン、キチン、キトサン 便として排出 byベラルーシの研究者

・フリーラジカルの影響を軽減 抗酸化作用物質を摂取 様々な動物実験でも実証されている

 ビタミンA、C、E

 βカロチン、カテキン(ポリフェノール類)

 

チェルノブイリの教訓

ホールボディカウンタ 国は早急にやるべき

 

放射能汚染地域における農業復興の試み ウクライナでは2007年から実施

汚染地域ナロジチ再生に向けて

移住対象地域ナロジチ、かつて3万人が暮らしていたが現在は取り残された1万人が居住

売るための作物×

立ち入り禁止の立て札のかかった家、

かつては家があった村は村ごと地面に埋められている

新たに移住者たちの村を国が提供

 

ナタネ栽培による土壌浄化とバイオエネルギー生産

根からCs137、Sr90を吸収し放射の除去

ナロジチにて現地説明会 村の中にバイオディーゼル工場を作る ナロジチ再生計画

2007年4月汚染土壌に菜の花プロジェクト開始

種まき4/13 汚染レベル370Bq/m2 (飯館550Bq/m2)

6/4満開 20年間放置された荒地に花が咲く 2ha

連作障害(ナタネ→ライ麦→ソバ)のため2-3年あける 秋蒔きもする 合計4ha

7月実が実る 8月収獲

春蒔き 1.5t/ha 秋蒔き 3.0t/ha

 

ナタネ油の放射能 種子全体Cs Sr

油には放射能入ってこない

ナタネ植物体の放射能汚染 種ができるまでは放射能全体に分散しているが、種ができると種子が汚染

 

ナタネ油 メタノール、苛性ソーダと調合しBDFへ。軽油と差がない。20km試験走行。

 

バイオガス製造装置 硫化水素の脱硫装置(+鉄屑)

2010年9/17バイオガス発生

食べもの作れないならエネルギー基地として

汚染農地で新たな農業復興

 

バイオエネルギー

ドイツユーデン村 バイオガスで電気と温水エネルギー自給 80℃の温水、オペレータ1人

ドイツBGプラントが3000基以上稼動(多くは農家が保有)

家畜糞尿や農産物のバイオマスが原料

持続可能で炭酸ガス収支がゼロ

スウェーデンではバイオガスで走る列車が運転開始2008年

家庭レベルで作る小規模なものがまだ多い

 

チェルノブイリでわかったこと

1.Cs137吸収する作物ナタネなどを植える(水溶性セシウムを吸収)

2.次年度は別の作物を植える(CS汚染少ない)、家畜の餌など

3.3年目、Cs137の吸収しにくい作物を植える

4.再びCs137をよく吸収する作物を植える

 

政府に対する提案

土壌汚染対策法 定める有害物質

放射性セシウム、ヨウ素、ストロンチウムを加える

 

ナタネはバイオディーゼル用に日本ではコスト的に厳しい

大豆カリウム含有量高い

ナタネは3番目、4番目

アマランサスはセシウムの吸収ではすぐれているが、デンプン質でバイオアルコールが出来上がる

ルピナス有用

 

<質疑応答>

ひまわり95%吸収 残ったカスの量が多い、木質物が多いため後始末を考えなくてはいけない、バイオガスを作るのに有害という特性

 

土壌を掘り返す…拡散し危険

 

規模が大きければバイオガス可能

放射性物質は元素なので消滅することはない

 

ボランティアで現地に物資を届けている若者が、何が不足しているのか河田さんに訊ねると、「新鮮な野菜です。たまたま長野の野菜を届けるすべがないので、担ってほしい。」と話がまとまる。

聞き書きのため誤りがあるかもしれません。

内容はチェルノブイリで実証済みのことが多く信頼のおけるものでした。武田邦彦教授のウェブでも裏づけされる事柄が多く、納得のできる充実したものでした。

おりしも6月8日下水処理場の汚泥汚染のニュースを知る。数日前に聞いた話が東京で現実化していました。ということは福島、北関東はより悪い状態ということになります。

江東区の保護者でつくる「江東こども守る会」は七日、都庁で記者会見し、都の汚泥処理施設「東部スラッジプラント」(同区新砂三)近くのグラウンドの土から高濃度の放射性セシウムを検出したとする独自調査の結果を発表した。

母乳の放射能汚染検査結果福島、茨城、千葉、栃木等のお母さんたちの母乳検査している名古屋のNPO母乳調査・母子支援ネットワークの報告、資金カンパのお願いあり。母乳にヨウ素131、セシウム134、137が検出されているとのこと(一部避難)。これはそのまま赤ちゃんの内部被曝になるため、国が放っておく以上自衛しなければならなくなります。
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