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国際有機農業映画祭2012

今年で6年目の有機農業映画祭。今年は市ヶ谷法政大学にて、2会場を使い日曜日の1日のみで開催。今年のタイトルは「こんな世の中、ひっくり返さなあきまへん」です。10時から、に駆けつけるのは必死。選挙は数日前に期日前投票にて済ませました。

 

市ヶ谷の法政大学外濠校舎。開会式の時点でかなり空席が目立ちましたが、観客は徐々に増えていきました。

「花はどこへいった」  2007年 71分 制作・監督:坂田雅子

 

映画上映の前に、監督の話。

夫(1948-2003年)が体の不調で診察を受け肝臓ガン余命1週間と診断され10日後亡くなり、茫然自失、その後アメリカで2週間ドキュメンタリ制作を2週間勉強し、新たな社会との関わり方をするようになった。肝臓ガンの原因はひょっとして夫Gregが従軍したベトナム戦争の枯葉剤の影響ではないかと考えるようになる。

ベトナムに3年間兵役後、アメリカに帰還したが、ベトナム帰還兵に冷たいアメリカ社会、「赤ん坊殺し」、「なぜもっとアカを殺さない。」と攻撃され精神的に追い詰められアメリカを離れる。坂田さんは1970年代京都で学生運動しており、知り合う。結婚し、枯葉剤の影響で子どもはもてないと言われており、枯葉剤の話は会話にそれ以上のぼらず。Gregはフォトジャーナリストとして活躍(Timeの表紙に撮影した写真が載ったことも)、考え深く批判的な大人、ベトナムを愛していた。

坂田氏は枯葉剤について調べる。ベトナムを訪ね、Gregが駐屯していた基地を探し、当時の様子を知る人に聞き取り調査。

25年の親友フィリップ・ジョーンズ・グリフィスはGregを根っからのアナーキストと表現。

映画の内容。1961-72年ベトナム戦争で白とピンクの粉枯葉剤約7200万リットルが撒かれる。Gregは何度も枯葉剤を浴びた。当時のアメリカ大統領アイゼンハワーは錫、タングステンを失いたくないばかりに安上がりで最悪な枯葉剤の使用を決定。2時間で植物が枯れるほどの毒性の強いダイオキシン。人体への影響はないと発表していた。

その中に含まれていた催奇性や発がん性を持つ猛毒・ダイオキシンは、戦争終結から37年たった今も、ベトナムの人びとと大地を蝕む。2004年坂田雅子監督は、フィリップと被害者を訪ねるが、田舎、都会あらゆるところで容易に被害者を見つける。当時は枯葉剤の影響とも知らず、遺伝と考えられる。祖父母から孫世代にも催奇性の症状が見られている。貧しさに追い討ちをかけるが、アメリカ側の補償はない。薬剤会社は莫大な利益を得たが、企業側の責任ではなく、補償は国単位と責任回避しているとのこと。

「米の放射能 汚染ゼロへの挑戦」 2012年 日本 28分 監督:原村政樹

 

2011年10月12日に福島県知事は、米の安全宣言を出すが、直後高濃度の玄米が報告され、福島の米農家はテロリスト呼ばわりされるようになる。

天栄村、21人の農家グループ、天栄米栽培研究会を立ち上げ、4年目に311、原発事故に会う。被災し、国・県から農地を動かさないでくれといわれる。日本土壌肥料科学会の研究からカリウムを撒くと稲はセシウムを摂取せずと知る。土壌から米には1%移行。1kg500ベクレルを安全とする政府、ゼロにしたいという農家。3つの物質カリウム、ゼオライト、プルシアンブルーを試験する。例年の4倍量のカリウムを撒く。米の味が落ちるのでは?苦渋の選択。ゼオライトは天然鉱物で吸着性能があり、栄養素まで取り込んでしまう。散布するにもどれだけ散布したらよいのか手探り状態。10a40kg〜500kgまで田んぼごとに試す。コスト的に100kgが限度。プルシアンブルーはドイツで合成された人工顔料。チェルノブイリで牛でセシウムを取り込むのに実績があり。米に使用するのは世界初の試み、値段が高い、実用化が難しい。小さな畑で試す。6倍の差が出る。

4月プルシアンブルーの布を水取り入れ口に取り付け、5月上旬カリウムを含む肥料を撒く。無農薬の田んぼでは天然カリウムを。11年12月雪解け水にはプルシアンブルーの布を通す。

天栄村のコメ計測。いずれも「検出せず(検出限界10ベクレル以下の未検出)」。しかし、「フクシマ」というだけで売れず。

「探そう!地元のオーガニック野菜」 2009年 アメリカ 28分

 

こちらは唯一別会場で観た映画。既に始まっており、満席。若者が多い。やっと空いた席に座るが、ほとんど字幕は見えない。

 

アメリカの小学生女子2人組が自分の食卓の食べ物の素性を追いながら、地元の有機農産物の真の価値に気づくドキュメント。2人は夏休み、家族で訪ねた有機農家のトマトの濃い味に驚き、スーパーのトマトとの違いに疑問を抱く。世界地図を広げて食べ物調査をスタート。近郊の有機農家と出会い、地元で有機野菜を買うにはどうしたらよいか考える。

 

ベランダでプランター栽培したり、地元のオーガニックマーケットに野菜を買いに行ったり。オーガニックはアメリカでも大きな動きのはず、子どもたちが自ら有機野菜に目覚めていくあたりが映画になっていて。育つ環境で、食べものに対する感度は違ってくる。とにかく気付いた時点がはじめの一歩。

「3分ビデオリレー」上映

恒例のコーナー。素人なりにいい味の作品が多数。多種のテーマがあって楽しい。

「未来への診断書 水俣病と原田正純の50年」 日本 54分 監督:安松直朗 制作:熊本県民テレビ

2012年6月11日、私たちは原田正純さんという「宝」を失った。水俣病の患者さんたちにとって、原田さんがいかにかけがえのない存在だったか、この映像が教えてくれる。7月31日、水俣病救済策への申請が締め切られた。理不尽な患者切り捨てである。患者さんに寄り添い続け、その無念さを、怒りを、代弁し支えてきた原田さんの遺言を伝え、水俣へ想いを寄せるために。追悼上映。

熊本では有名人の原田さん。精神科医。漁師の家、患者を訪ねると、「熊大ノ先生モクルナ」と貼り紙。記事になり、魚が売れなくなり、生活が苦しくなる。隠れるように暮らす患者たち。認定患者、お腹の中で「ようなったものはおらんし、死んでいくばっか。」胎児性水俣病の子ども、4才まで歩けず、胎盤でもって毒物を通さずといわれていたが、子どもが毒を吸い取ってくれたに違いない。徹底的に調べる。鹿児島県長島町にも水俣病患者。妊娠した子ども5人中3人死産流産し、認定受けたら恥。

水俣病の特徴、手足感覚鈍く、痺れ、視野狭い。

原田医師、医者として偏っている、常に患者側と非難される。ありがたい批判と受け止める。患者側でない医学があるのか?中立とは?医師として水俣を語り継いでいく。対立の歴史、国・県とチッソ認定基準を盾に争う。

鳩山総理、基本合意が成立。お金を払うことが償い?償いの一部である。

国は不知火海に住む人を調査しておらず。患者の掘り起こしのため、全国から140人の医師が集まり、20〜90代の1000人の健診が行われる。

原田医師は一方で、水銀の被害を受けるカナダ、アフリカタンザニア、アメリカに出向き海外調査30年以上続ける。カナダオンタリオ、居留地に追いやられた先住民族、川で魚を捕って暮らす。水俣病と共通の症状。

水俣、胎児性水俣病の患者が今50代前半。再会、脳梗塞、食道ガンになった原田医師を心配する。「いつのまにかみんな車椅子、老化が早い。」と原田医師も心配する。

鳩山総理参加の慰霊式、一方で患者主催の慰霊式。過去でなく未来の問題。

 

「シンポジウム」

報告者:菅野正寿氏、福島県二本松市、農業に従事。福島県有機農業ネットワーク代表。原発から47キロ。広がる耕作放棄地。梅栗柿に移行。身の丈にあった復興を願う。

報告者:古田睦美氏、長野大学環境ツーリズム学部准教授。上田市で「コラボ食堂」。当たり前の暮らしを求め、農業と共に人間らしく生きる。互恵的コミュニティ(蚕都くらぶ・ま〜ゆ180世帯で地域通過)の構築、脱商品化、小規模農家と共に。NPO「食まちネット」の取り組み。CSA(地域で農業を支える)活動。20トンないと商品化ができない。そういったものは保存料が必要。途中からパワポ撮影。150万の助成金で町おこし。

おもしろそうなものばかり
郷土愛がたっぷり
あや姫膳、食べてみたい

こらぼ食堂参加者一覧、ワンデイシェフなのでこれで生計が成り立つわけではない。

どれもすてきなことば。

他者を受け入れる姿勢がいい。

「あきらめてはいけない」響きます。

報告者:白石草氏、ビデオジャーナリスト。OurPlanet代表。

コメンテータ:河村哲二氏、法政大学教授

コーディネータ:安藤丈将氏、国際有機農業映画祭

「お米が食べられなくなる日」 2012年 日本 35分 構成:小池菜採

日本の主食、お米。しかし10年後には、日本で米づくりができなくなるかもしれない。日本各地の生産と消費の現場、メキシコ、タイの農民の声から見えてくるものは、めまぐるしく変わる政策と「効率化」の名の下に引き起こされた混乱。稲作農家の労働を時給に換算するとなんと179円。自給の意味、食の安全、米づくりを通して大切にしたい価値を問う。

減る米消費と減反。2009年の米消費は58.5kg/人。1962年の半分になった。

米農家、2011年時点平均65.9才、4割後継者なし、機械の買い替え時が辞める時期。

TPP関税撤廃、日々の暮らしが国際価格に振り回される。他の作物との教護、水問題、干ばつあるとどうなるのか。

 

 

「ホッパーレース ウンカとのいたちごっこ」 2012年 日本 38分 監督:河合樹香

近年、稲の害虫、ウンカがアジアの稲作地帯で猛威を奮い、西日本にも飛来している。世代交代が早く、農薬やウンカ抵抗性稲品種に次々と適応する。この現状を打開しようと国際稲研究所のヘオン博士を中心に、科学者達が立ち上がった。虫の視点から俯瞰すると、自然の法則と真っ向に対立する人間の営みの姿が浮かび上がる。

 

ウンカ、はじめて知りました。左写真、植物にたかっている小さな虫のほう。農薬でウンカをやっつける天敵である虫をやっつけてしまうためウンカの天国となっているのが現状。ウンカは農薬に強く、品種改良にも対応。

「太陽の女王 ミツバチからの問いかけ」 2011年 アメリカ 82分 Queen of the Sun

ミツバチの置かれている現状を通して、私たちの生き方が問われる。人間は古代からミツバチの恩恵を受けてきた。ところが近年、ミツバチに異変が起きた。人間の都合による虐待でストレスやダニの発生、病気に見舞われた。とどめを刺したのが神経毒性を持つネオニコチノイド系農薬。巣ごと全滅するのだ。ミツバチを飼いましょうという、提案もある。

 

植物の40%はミツバチの授粉によるもの。古代インダス文明、ギリシャ、エジプト3400年前の墓に納められた蜂蜜は今でも食べられるほど。

シュタイナーは「養蜂あっての暮らし」と。

アメリカ、カルフォルニア、養蜂、ハチにコーンシロップ、抗生物質を与える。オーストラリアのミツバチがアメリカに感染もたらす。生態系を壊す。

バイオダイナミック農場、ミツバチの楽園。モンサント遺伝子組み換えの農場に包囲されている。ミツバチのための食料無し。土を再生することから。

修道院はミツバチを見習ったかのようなもの。全体のために尽くす理念。

人間とハチの好みは一致している。

イタリア、ピエモンテ、養蜂家はミツバチと恋した人。

ネオニコチノイド(バイエル)神経毒性

人間はミツバチなしに生きられない。

ニュージーランド、マオリ族は養蜂家を尊敬してきた。

スパイクナード農園。

ショップブースでは本、江戸野菜、福島野菜の展示、販売等。焼き菓子、オーガニックコーヒー、紅茶の販売も。ランチの販売もあったようですが、見つけにくい場所なので購入できず。

この映画祭にまる一日いたのははじめて。

最後のプログラムの「太陽の女王」を観たかったため、がんばりました。

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