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第8回 グリーンイメージ国際環境映像祭2021年
会場:道の駅 まつだいふるさと会館 常春ホール(新潟県十日町市松代3816-1)

オンライン上映配信で観る

3日間のその時間のみの配信で緊張。気候変動を問題に捉えた映画が多い。世界はそういう時代背景なのだろう。

 

「この水だれの水」 Isn't Water

「パキスタン-溶けゆくヒマラヤ Pakistan's Himalayana Meltdown

「水俣曼荼羅」 MINAMATA Mandala

「母たちの大地」 Mothers of the Land

「たづ鳴きの里」 Cries of the Crane

「ワットエバートゥリー」 WhateverTree

「移民ホッキョクグマ」 Migrants

「空にある村」 Village In The Sky

「サマショール 遺言第六章」 Samosely:The Will-Chapter6

「コンビナート」 Kombinat

「ヒト科ヒト属」 The Human

「ヒグマと老漁師-世界遺産・知床を生きる」 Bearman of Hokkaido

 

特別プログラム「馬搬馬耕-里山での多様な馬の利活用の未来」

里馬の森から ? 森を活かす古くて新しい技術・馬搬

 

「この水だれの水」 Isn't Water

(イラン / 2019 / 3分 / 言語なし / プロデューサー:Art Department of North Khorasan / 監督:Noah AMANI / 製作:Art Department of North Khorasan)

水不足で苦しむ地域の子どもたちの新聞記事を見た少女がとった小さな一歩。イランから届いたショートドラマ。

 

母親が出しっぱなしにした水道を止めにいく少女。こちらは富裕層?一方、荒野の中、簡易水タンクからの蛇口からの水を待つ子どもたち。少女が色鉛筆で蛇口からの水の絵を描くと、荒野の中の蛇口から水が蕩々と流れ出る。

「パキスタン-溶けゆくヒマラヤ」 Pakistan's Himalayana Meltdown

(シンガポール / 2020 / 50分 / 英語(日本語字幕) / プロデューサー:Shehzad Hameed AHMAD / 監督:Shehzad Hameed AHMAD / 製作・配給:Mediacorp Pte Ltd)

「雪の家」という意味の名であるヒマラヤの氷河は、気候変動により、今世紀末までに3分の1が溶けると予測されており、南アジアの約20億人への水の供給が脅かされている。インド・パキスタンの間で起こっているシアチェン氷河を巡る紛争、パキスタンの首都カラチで横行している水泥棒、気候変動緩和のための植林政策など、水を巡る最前線のレポート。

 

印パ紛争といえば核兵器の開発競争と言われたのに、いまや水が兵器になっている。インドパキスタンは地続きであり、国境は川、気候変動で水源を抱える国家はそれをどうコントロールするのか。2020年大洪水があった。一方で2000万人の人口を擁すパキスタン、カラチでは水不足が生じ、闇市場が横行。収入の三分の一が水道代に消える。気候変動によってヒマラヤ氷河が容赦なく溶け、安定した水源となってきたのに100年後には尽きてしまう。国家、地球規模の政治的問題提起の映画。パキスタンには気候変動省があるのに驚く。 監督はパキスタン出身なのでパキスタン側の目線で語られている。

「水俣曼荼羅」 MINAMATA Mandala

(日本 / 2020 / 369分 / 日本語(英語字幕) / プロデューサー:原 一男、小林 佐智子、長岡 野亜、島野 千尋 / 監督:原 一男 / 製作:疾走プロダクション)

日本四大公害病の一つとして知られる水俣病。その補償をめぐっていまだ裁判の続く患者たちの戦いを15年に渡って撮影し、5年間の編集を経て完成させたドキュメンタリー。裁判の経過とともに人々の日常生活や水俣病をめぐる学術研究までが網羅された一大叙事詩。

 

6時間の長編ドキュメンタリー。途中休憩2時間ごとに2回はさむ。どうしても削れずにこれだけの長さになったのだろう。
水俣の公害問題に問題意識を持っている人はどれだけなのか。私にとって、小学生の社会科で習ったのみ。現代史、公民ではほぼ扱われず。今や教科名が変化し続け不明。
2010国際有機農業映画祭で「水俣の甘夏」を上映した。それが久しぶりの水俣との出会い。その後、映画祭で水俣ものを上映しようとするも、制作側の問題で上映にいたらず。
そしていきなり6時間もの映画を観ることができた。(数年前からジョニー・デップがユージン・スミスを演じる「Minamata」を待っている。)
記録映画の王道。歴史に残る映像。度重なる裁判、熊本県、環境省の冷めた会見、患者に対する詐病扱い、無礼さ、非礼さ。データを取る医師にカメラは随行する。努力で疾病を補おうとするする患者の、病気認定が軽くなってしまう怖れを映す。認定されたからといって、病気が改善するわけでない。水俣病なるものが明らかになった初期、単なる手・指の感覚異常と判断され、その後、大脳皮質異常を起こしているという重篤な診断結果が得られた患者、医師の50年間のこれまで。「胎児性患者」のことばが聞き取れず、字幕でfatal patientと出てくる。母親が有機水銀を含んだ魚を摂取して生まれながらの患者ということ。

終わり近く、亡くなる少し前の石牟礼道子さんが登場する。悶え神を語る。水俣に生まれ、患者たちと闘ってきた人生。ペンを執ればあの世この世を行き来し、悶える。最後は胎児性患者実子さんの映像で終わった。何人もの患者、遺族が映されていたが、彼らの自然な動きに撮影者との信頼関係を感じるばかりだ。

 

「母たちの大地」 Mothers of the Land

(ペルー / 2019 / 74分 / ケチュア語・スペイン語(日本語・英語字幕) / プロデューサー:Alvaro SARMIENTO, Diego SARMIENTO / 監督:Alvaro SARMIENTO, Diego SARMIENTO / 製作:HDPeru)

アンデス高地に生きる5人の女性たち。農薬や遺伝子組み換え種子を使う工業的農業が主流となった中、伝統的な有機的方法で農耕を続けようと奮闘する彼女たちの日々を追う。

 

アンデスといばジャガイモ、そしてトウモロコシ。が、気候変動で雨が降らず心配する。温暖化の対処として標高を上げて作物作りに励む。有機で作る作物のおいしさを語り、そしてタネの交換会にわくわくする。まるでアメリカ、EUでやっているのと同じことをしている。

「たづ鳴きの里」 Cries of the Crane

(日本 / 2020 / 47分 / 日本語(英語字幕) / プロデューサー・監督:坂本 英樹 / 製作:北海道テレビ放送)

北海道長沼町の農家が100年以上前に姿を消したタンチョウを呼び戻す活動を始めた。洪水対策として造られた遊水地に湿地を復活させ、ツルの繁殖を目指すものだ。空き地が湿地へと変わっていく中、別の動物が訪れて農業被害が起き、ツルを追いまわす撮影者も現れる。住民と農業とツルの共存を目指して模索を続ける農民たちの1500日。

 

「ワットエバートゥリー」 WhateverTree

(カナダ / 2020 / 12分 / 言語なし / プロデューサー・監督:Isaac KING / 製作:Isaac KING)

ある1本の枯れ木が、生きものたちを惹きつけ、自然を愛する人々を惹きつけ、大勢のSNSフォロワーたちを惹きつける。ソーシャルメディア時代の人と自然の関係を切り取るアニメーション。

 

 

 

「移民ホッキョクグマ」 Migrants

(フランス / 2020 / 9分 / 言語なし / プロデューサー:Carlos De CARVALHO / 監督:Hugo CABY, Antoine DUPRIEZ, Aubin KUBIAK, Lucas LERMYTTE, Zoe DEVISE / 製作:Pole 3D)

地球温暖化によって北極に住めなくなった2頭のホッキョクグマ。生きる場所を求める旅の中で、ヒグマに出会い、共生しようと試みるのだが‥‥。愛らしいめいぐるみアニメーションで描かれるこの世界の寓話。

 

ぬいぐるみがかわいい。これもまた気候変動で、北極に住めなくなったシロクマが移動してくるのだが、ヒグマたちに受け入れてもらえず排斥される。追い出され、海岸でうち捨てられた赤ちゃんシロクマは、2015年トルコ沖で発見されたシリア難民の子どもを彷彿させる。

「空にある村」 Village In The Sky

(インド / 2018 / 20分 / マラーティー語(日本語・英語字幕) / プロデューサー・監督:Film and Television Institute of India / 製作:Film and Television Institute of India)

十分な飲み水も灌漑施設もないインド・アガスワディー村に、最新の風力発電所開発計画が持ち上がる。開発により生活は改善されるはずだったが・・・・。

電力は外へ、頼みの雇用も徐々に切られ、地元はただ利用されるだけの話。

 

「サマショール 遺言第六章」 Samosely:The Will-Chapter6

(日本 / 2020 / 112分 / 日本語(英語字幕) / プロデューサー・監督:豊田 直巳、野田 雅也 / 製作:映画「遺言」プロジェクト)

放射能汚染により全ての村民が避難した福島県飯舘村。東日本大震災から6年後、避難指示が解除され、仮設住宅で暮らす元酪農家の長谷川健一さんは、ふるさとに戻るのか決断を迫られる。思い立ちチェルノブイリを訪れた長谷川さんが出会ったのは、原発事故から30年後の立入禁止区域に暮らすサマショール(自主帰還者)たちだった。原発事故を苦に命を落とした酪農家仲間の『遺言』と、意志を受け継ぐ飯舘村のサマショールたちの第六章。

 

 

「コンビナート」 Kombinat

(スイス / 2020 / 76分 / ロシア語(日本語・英語字幕) / プロデューサー:Xavier DERIGO / 監督:Gabriel TEJEDOR / 製作:IDIP Films)

ロシア中央に位置する重工業都市マグニトゴルスク。錆びついた煙突が並び立つ巨大工場の影に、人々の生活がある。製鉄所労働者サシャ、コンビナートの主催講座でサルサを教えるレナ、公害による障がいを持つ娘の親ゲニア、それぞれの日常を通して、この街のかたちが浮かび上がる。

 

ノンフィクションなのだろうけれどストーリー展開のようで、でも夕飯の時間なので前半のみ視聴。

「ヒト科ヒト属」 The Human

(オランダ / 2019 / 11分 / 英語(日本語字幕) / プロデューサー:Harko WUBS / 監督:Harko WUBS / 製作・配給:Hark'oh Film)

「人間」をネーチャーフィルム風に観察記録するとどう見えるのか?人と自然との関係性を風刺するショートドラマ。

 

観察されるヒト科ヒト属。おもしろい。 ヒトも動物のひとつ。ヒトを喰っている。

 

 

 

「ヒグマと老漁師-世界遺産・知床を生きる」 Bearman of Hokkaido

(日本 / 2020 / 49分 / 日本語 / プロデューサー:松宮 健一 / 監督:矢内 智大 / 製作・配給:NHK札幌拠点放送局)

世界自然遺産登録から15年目の北海道・知床。その奥地にある、ヒグマの世界的密集地帯ルシャにカメラを据え、人とヒグマが共存する姿を36年にわたって克明に記録した。野生のヒグマを叱る老漁師の姿を通して、西洋的な自然観とは異なる、「人も自然の一部にすぎない」という日本特有の自然観が浮かび上がる。

 

「コラー」と低く声を出すとヒグマが逃げ出す。そしてヒグマを追い払う術を知った老漁師。最初、猟師と書き間違えているのではと思った。が、漁師だから漁船で魚を捕りに行くし、ライフル銃は持っていない。番屋に戻る時に簡易ひもで短剣を身に付ける。ヒグマに襲われたことはこれまでにない。が、徐々に餌がなくなり、「コラー」と脅かしが通用するのは絶対ではない。そんな時に世界自然遺産のユネスコが知床ルシャを訪問。ランドクルーザー、四駆ワゴン大名行列。橋を取り除けだの、ヒグマ保存のための注文を取り付けていく。(いやいや君たちその橋を渡ってやってきたのでは。)そして、ヒグマがあたりをうろちょろ。老漁師が「コラー」と一喝する。ユネスコ団のアメリカ人教授が老漁師と番屋の中で急遽会談することに。叱りの発声でクマを制御することなんて見たことないと言う。(アメリカのクマといえば巨大グリズリーのイメージ!)その後のルシャに関する取り決めはcovid19のために会議が開かれておらず持ち越しになっているとのこと。

特別プログラム「馬搬馬耕-里山での多様な馬の利活用の未来」

里馬の森から ? 森を活かす古くて新しい技術・馬搬 (日本 / 2016 / 55分 / 日本語 / プロデューサー:小泉 修吉 / 監督:尾立 愛子 / 製作・配給:グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会)

現在、日本では人と馬がともに暮らす姿は見ることはできなくなった。山から木を馬と共に搬出する「馬搬」を生業とする馬方は、馬搬が盛んだった東北地方でも岩手県の74歳の職人とその弟子38歳の2人だけになり、全国でも数名を残すのみである。機械に頼らない、山や自然を壊さない生き方が注目されている中、わずかに残る昔ながらの馬との暮らしや文化を1年に渡り記録した。

 

馬搬・馬耕という農耕文化映像の続編。
林道を作るってたいへんだ。だが、馬搬であれば馬、荷物の幅があれば通れる。その技術を継承できるかどうか。馬力の語源をそのまま見る。重機を扱う林業の危険性は高く、馬搬となれば、馬の気性、急転直下の事態で危険度は増す。人間の手綱捌きが下手であれば、馬の命も左右される。下り道、研修生の行動を不安をもちながら観た。「伝統」として保存するだけでなく、実際に今、将来、必要とされる技術を保存していくべきものだ。

 

↓映画終了後パワポの解説があったので記録。